「焼けた肌に引き締まった身体、爽やかな笑顔。重いタンクを軽々持ち上げ、
水中では魚のようにしなやかな身のこなし。」
私のもつ、ダイブインストラクターのステレオタイプ、である。
フレンドリーで頼もしいダイブインストラクターに憧れるダイバーは多い。
私もそのひとり、、、ということは、前回暴露した。(バックナンバー参照)
今回は、旅先での恋、について取り上げる。
旅先、特に南の島では恋に落ちやすい。ロマンティックな環境が、恋心に拍車
をかける。南の島にハネムーナーが多いのも、ロマンティックな雰囲気を求め
てのことであろう。
ラロトンガに一人旅に来た友人M。その頃、フルタイムで働いていた私は、彼
女との時間が十分に取れなくて申し訳なく、ダイブマスター見習いのAに世話役
を頼んだ。責任感の強いAは、任務(?)を一生懸命やりすぎたせいか、2週間
後MはすっかりAに恋してしまった。
私は責任感を感じ、Aに「M、Aのこと好きになっちゃったみたい。」と伝える
と、「言葉もほとんど通じないのに、なぜ?」と、当惑していた。
余談だが、「目と目で通じ合う」とか「以心伝心」というのは、日本人的な感覚
なのか。純日本人の私は、恋に言葉の壁はない、ハートに従うだけ。と、思うの
だが、英語圏の人は、言葉を重んじるようだ。
ある夜、自宅でMとビールを飲んでいたら、Mが突然「私、やっぱりAが好き。
告白してくる。」と、スクーターに飛び乗り、満点の星空の下に消えていった。
まるで、ドラマを見ているかのような出来事であった。
あっけにとられている私は引き止めることもできず、飲酒運転は危ない、とか、
本質とは関係ないことでおろおろ心配していた。
1時間もしないうちにMは帰ってきた。
「どうだった?」
「Aね、F(女の子)と一緒だった。」
「で、どうしたの?」
「仲良さそうだったんで、Fと仲良くね、と言って帰って来た。」
Mはとてもすがすがしい顔をしていた。失恋したのに。その夜は、Mとふたりで
失恋パーティーとなった。恋っていいなあ、と、当時独身だった私は、彼女の情
熱をうらやましく思った。
M曰く、「旅先の恋って、リゾラバという言葉があるし、不純なイメージだった
けど、むしろ余計な先入観や計算がない分、とても純。こういう純粋な恋心って
長い間忘れていたわ。」
日本でややこしい人間関係に疲れていた彼女は、旅先の恋で、すっかり癒された
ようだ。しかも、せつないプラトニックラブ、さらに失恋、って、美しいラブス
トーリー。
旅先では、心が開放的になり、日常生活とは違う視点で人を見る。原始的、本能
的な目で。だからこそ、旅先の恋は、燃え上がる。